「ミッテランの帽子」がまた読みたくなる4つの理由   

Le chapeau de Mitterand

4 Raisons pour relire “Le Chapeau de Mitterand “ par Antoine Laurain

「ミッテランの帽子」また読みたくなる4つの理由

1 インターネットがなかった時代へタイムスリップするような設定がおもしろい

2 1980年代のパリを彷彿させる登場人物が魅力的

3 心を揺さぶってくれるラストシーンが感動的

4 映画のような展開で、スルスル読める

あらすじ(ネタバレあり)

平凡なサラリーマンのダニエル・メルシエがひとりでパリのブラッスリーで夕食をしていると、隣の席にフランス大統領が座った。大統領が去った後、帽子が忘れられていて・・・。

27歳のOLファニー・マルカンは不倫関係に終止符が打てずに悩んでいたとき、汽車の中で黒い帽子を見つけ・・・。

「香りのスタンリー・キューブリック」と言われた名調香師ピエール・アスランは、新作を作れずに悩んでいたが、ある日モンソー公園で黒い帽子を見つけたことから・・・。

ベルナール・ラヴァリエールは、パリの中産階級の代名詞のような存在。そんな彼が仕事面も社交面も行き詰まったとき、愛用の帽子がレストランで、別の黒い帽子と入れ替わってしまい・・・。

こうしてミッテラン大統領の黒い帽子は人から人へと渡っていき、彼らの人生を少しずつ変えていく。そして最後に帽子を手にするのは・・・。

1980年代のパリが舞台の、ちょっとミステリアスでおしゃれなストーリー。

「ミッテランの帽子」を楽しむための4つのポイント

ミッテラン大統領の時代

 ミッテラン大統領は、1981年に初めて社会党から選出された大統領です。有給休暇の延長、法定労働時の削減、死刑制度の廃止などの政策を取りました。ミッテラン大統領は「庶民的な大統領」と言われ、愛用の黒い帽子がトレードマークになりました。

ちなみにほかの国では・・

アメリカでは共和党のロナルド・レーガン大統領、イギリスでは保守党のマーガレット・サッチャー首相などのリーダーが出現しました。西ヨーロッパではヨーロッパ連合発足に向けた政策が展開されました。ソ連ではゴルバチョフ書記長の指揮下でペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)の政策がとられ、1989年の年末には、1947年から続いていた冷戦が終息しました。日本では中曽根康弘首相が内閣を率いて、「バブル経済」時期に突入しました。

通信・電子機器の進化の時代

・1980年代は、ビデオゲームやC Dプレイヤーなどの電子機器が次々と世に出ました。特にソニーの「ウォークマン」が発売されると、スポーツ界、ファッション界だけでなく、世界中が「音楽を携帯する」アイディアに夢中になりました。

・1987年の携帯電話の発売は、その後通信業界に大きな変化をもたらしました。

ファッションの進化の時代

・1983年にマイケル・ジャクソンの「スリラー」が世界的に大ヒット。MTV、ミュージック・ビデオを使った新曲のプロモーションが主流に。その後もマイケル・ジャクソンの映画のようなプロモーション・ビデオが次々ヒット。

・1984年に「ライク・ア・バージン」でデビューしたマドンナも、MTVを使って一躍世界のスーパースターの座に。日本での成功例は、オフコース、サザンオールスターズ、小泉今日子など。

・音楽界と映画界に続き、ファッション界、コスメ界も連携。新進メゾンのゴルティエ Gaultier やアルマーニ Armani などから、新しいスタイル発信。老舗メゾンもラインナップを一新し、デザインがより豪華で自由なものに。 

・香水が女性の輝かしい社会進出の象徴に。

 有能で美しい女性たちは、男性優位のビジネスシーンに入り込み、華やかさと圧倒的な存在感をアピール。男性用コロンも、より男性らしさをアピールする香りが次々出されました。 

 中でも老舗メゾンのディオールでは1985年に、「すべての女性が自分らしさを見つけられる香り」として、業界で初めての、全ての香りの基調を持つ「プワゾン」を発売しました。続いて1988年には、男性用コロンで初めての、フローラルノートを持つ香り「ファーレンハイト」を発売して話題を集めました。

近代美術の進化の時代

ポップアートやミニマリズムのほか、などが台頭し新しい時代へ。また、アメリカのアンディ・ウォホールやNYを拠点に活躍した、ハイチにルーツのあったジャン=ミシェル・バスキアなどが注目を集めました。

作品の評価

<フランスでの評価>

<各賞の受賞>

ランデルノー賞と、ルレ・デ・ヴォアヤジュール賞を受賞しました。

ランデルノー賞 Le Prix Landerneau 未来を期待される作家に贈られる賞

 ルレ・デ・ヴォアヤジュール 賞 Le Prix Rela des Voyageurs

                    「読書の喜び」を伝える優秀な作品に贈られる賞

<テレビドラマ化>

題名:ミッテランの帽子        

監督:ロバン・デイビス

脚本・脚色:ロバン・デイビス、アントワン・ローラン   

制作:France2 放送:2016年1月6日(日本では残念ながら閲覧できません)

出演:フレデリック・ディフェンタール、ロラン・ジロー、ほか

🐶レストランで大統領の帽子を見つけるダニエル役を演じたのはフレデリック・ディフェンタールリュック・ベッソン制作・脚本の映画「TAXI」シリーズで、主人公のエミリアンを演じた俳優さんです。

<イギリス・アメリカでの評価>

2013年に英語翻訳版「The President’s Hat」がGallic Booksから出版されました。また、イギリス・アメリカの主要ブッククラブで紹介され、たちまちブレーク。電子書籍(Kindle)部門でも売り上げ5位となり、サイン会ツアーも行われました。

<日本での評価>

2018年に新潮社クレスト・ブックスから翻訳版「ミッテランの帽子」が出版されました。

<イタリアでの評価>

「Il Capello Di Mitterand」のタイトルで出版されました。

<他の国での評価>

ほかに、ドイツ、ロシア、韓国などでも翻訳され、今や15か国以上で親しまれています。

感想

パリに住む人生に行き詰まっていた4人が、代わる代わるフランス大統領の帽子を手にしたことから、冴えない人生が「欲しかった人生」に変わる。思わずため息が出てしまう展開ですよね❤️

背景の1980年代は、ケイタイも、メールも、SNSもなかった時代。

1980年以降に生まれた方は、想像もつかないかも😱知れないですね!

メディアは新聞・雑誌・テレビ・ビデオなどで常に発信していました。

でも私たち一般人が、今TwitterやInstagramを使うように、発信する側に回ることができなかった時代です。もちろんブログもありませんでした。

SNSが現れたのは2004年以降ですから「自分たちも発信したい!」というエネルギーが溜まって15年後に形になった、といえるのではないでしょうか。

本編はストーリーのテンポがいい上に、3~4ページの短い章が連なっているのでとても読みやすい作品です。

正直言って、私も文字がびっしり詰まった小説は苦手です。でもこの作品は、さらさらと読めて、あっという間にラスト!もう少し読みたいのに、という気持ちも起こさせてくれます。

あっ、読み応えはたっぷりあるので、ご心配なく!!

作者アントワーヌ・ローランのプロフィール

アントワン・ローランは、1972年パリ生まれ、パリ育ち。ジャーナリズム、短編映画の制作、シナリオライター、パリの骨董商のアシスタントの仕事などを経て2007年に小説家デビュー。処女作「Ailleurs, si j’y suis(ある肖像画)」は骨董商の仕事から着想した作品で、2007年にドルオー賞を受賞。現在、世界で最も読まれているフランス作家の一人です。

※アントワン・ローランのその他の著書一覧を作成しました。本編番外編をご覧ください。

購入方法

これから読んでみたい方のために購入方法を掲載しました。

書店で買えます。

   お取り寄せの場合があります。

通信販売・電子書籍も買えます。

その他Amazonでも紙書籍・電子書籍が購入できます。

番外編 アントワン・ローラン作品一覧

タイトル出版年    出版社
Ailleurs, si j’y suis
(ある肖像画)未邦訳
2007    Le Passage
Fume et Tue
(タバコと殺意)未邦訳
2008    Le Passage
Carrefours des Nostalgies
(ノスタルジーの交差点)未邦訳
2009    Le Passage
Le Chapeau de Mitterand
「ミッテランの帽子」
(新潮社クレスト・ブックス)
2012    Flammarion
La Femme au Carnet Rouge
(赤いモレスキンの女)

(新潮社クレスト・ブックス)
2020年12月21日発売
2014    Flammarion
Rhapsodie Française
(フランス・ラプソディ)未邦訳
2016    Flammarion
Millésime 54
(ヴィンテージ1954)未邦訳
2018    Flammarion
Le Service des Manuscrits
(出版企画室)未邦訳
2020    Flammarion
Et Mon Coeur Se Serra
Le Sonneurとコラボ作品
(その時僕の心は・・・)
2021 予定   Flammarion

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最後に

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Izumiはベルギー生まれ、ベルギー育ちのバイリンガル・ブロガーです。

でもこのところフランス語の文化から少し遠ざかっていました。

今回は読書の秋におススメめの、もう一度読んでみたい作品をご紹介しました。ぜひこの秋もう一度読みたい作品です。

また英語力に自信あり!という方には、英語版もオススメです。

今回はこの辺で失礼します。

次回をお楽しみに! A bientȏt 🖐🏻!

和泉 涼

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