秋の紅葉狩りとトレジャーハントが出会うとき

Quand la Chasse aux feuilles d’automne, tradition japonaise, rencontre la chasse au trésor.

紅葉の季節がやって来ました。

早朝に我が家の庭先を掃いていたとき、落ち葉の中に赤や黄色の美しい葉がたくさん混ざっていました。思えば紅葉狩りの季節。これを我が家で楽しむささやかな贅沢に心が躍ったとき、ふと考えました。

日本の秋の楽しみ「紅葉狩り」とフランス式トレジャーハントが出会う地点があるだろうか、と。

ブリュッセルの秋の記憶

ブリュッセル郊外のソワーニュの森 (La Foret de Soignes)では、毎年秋になると、緑だった森が赤や茶や黄色に色づきます。その様子は、森の中の神秘的な力が、木々を内側から染め上げているように見えたものです。

また、ブリュッセル郊外にあるユルプ城 (Le Chateau de la Hulpe) の庭園では、秋の昼下がりに木枯らしに吹かれた落ち葉が、太陽の光を受けて金色に輝きながら空を舞うことがあり、それは見事な光景です。

フランス語の秋は『枯れ葉』の世界

フランス語では、秋の紅葉した葉っぱのことを 「les feuilles mortes」(レ・フイユ・モルト) といいます。

直訳すると「死んだ葉っぱ」です。枯れた葉っぱ。命が終わった葉。

「えっ?フランス語ってもっと趣深いことばだよね?」そう思われたかた、正解です。

たとえばこれに「終わりを告げた二人の愛」のイメージを重ねると、たちまち「哀愁をかみしめる粋なフランス文化」の扉が開くのです。

秋はメランコリックな気分を味わうのに、ぴったりの季節。あのイヴ・モンタンのシャンソン『枯れ葉』を覚えていらっしゃいますか。

あの歌にある「熱く燃えた二人の愛も終わりを告げた。あの木枯らしに吹かれて舞っている、枯れ葉のように」の世界です。

ほろ苦い失恋の痛みも、ドライながらほんのり甘い白ワインのように味わうのがフランス式の「粋」かも知れません。

日本の秋は「紅葉狩り」の世界 

日本流の秋の粋な楽しみ方といえば、「紅葉狩り」。

秋に木々が紅葉して美しい景色が楽しめる場所は、世界中にあります。

でも、日本のように紅葉の鑑賞を文化にまで高めた国を、ほかにご存知ですか。

日本の紅葉を愛でる風習は、万葉集の頃からあって、和歌で度々詠まれてきました。

そして平安時代(12世紀)になって「紅葉(もみじ)狩り」が始まったと言われています。当時は美しい葉を手折って、掌に乗せて鑑賞するという鑑賞法まであったそうで、葉を手折ることが「狩り」に喩えられていました。

ところで、対象がジビエ(猪や鹿などの食肉のための獲物)ではない場合に「狩り」ということばを使うのは、日本語だけでしょうか。

宝物はハンティングするもの

フランス語では、狩りという名詞は「la Chasse」(ラ・シャス)、動詞は「Chasser」(シャセ)です。

ちなみに英語では、ご承知の通り、名詞も動詞も「Hunt」(ハント)ですよね。

ハンティングは、狙いをつけた1頭の標的を追う、という手法に基づいています。

実は「宝探し」のことを「la chasse au trésor」(ラ・シャス・オ・トレゾール)といいうのをご存知ですか。そういえば、英語でも「Treasure hunt」(トレジャーハント)といいますよね。

従来の「狩り」という単語を使いますが、ここでの獲物は「宝物」です。自分にとって特別なものを見つける、ということになります。

美しいものを愛する心

日本の「紅葉狩り」は平安時代の貴族文化に原点がありますが、今では一般市民も楽しめる、「美しいものを鑑賞する」という慣習です。

フランスでも「宝物をハンティングする」という概念もあれば、大切な人を失った悲しみや誰かを愛する喜びを讃える詩を書くのは、千年近く前からずっと続けられていることです。

どちらも「自分にとって特別なもの」を見つけ、それを手元に置いて心を癒すことなのです。

自分だけの宝をもつ喜び

みなさんも、ご自分だけの宝ものをおもちのことと思います。

  • 何代も前から伝わる巻物
  • お母さんから受け継いだカメオのブローチ
  • はじめて日本を訪れたときにプレゼントされた日本人形
  • リカちゃんやバービー人形のコレクション
  • 失恋の悲しみを綴った詩

形はぞれぞれです。

絶えず変化する世の中で、自分が辿ってきた道やその記憶が宿る物は、この先どんなことがあっても、自分だけの宝ものです。「モノ」に自分のアイデンティティを託す、というお話ではありません。「あの記憶は紛れもない事実だった」と物語る、自分の歴史の証人なのです。

そんな一人ひとりの歴史の集合体が言語であり、文化ではないでしょうか。日本語でもフランス語でも同じことが言えるはずです。

人がたくさん集まってできているからこそ、お国柄が違っても、遠く離れていても、思わぬところに共通点があるのです。

フランスに紅葉を手折って鑑賞する人はいないかも知れませんが、美しいものをコレクションしたり、手元において心を癒すのは、日本でもフランスでも、世界のどの地域でも、同じ人間ならではの営みだ思います。

最後に

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回の記事は、庭先を掃いていた時に撮った写真がきっかけになりました。この機会に、人生を彩ってきた、みなさんだけの宝ものを、お手に取ってみられてはいかがでしょうか。

この記事が少しでもみなさんのお心に届けばと願っております。

寒さも本格的になってきましたので、風邪など引かれませんお気をつけくださいね。

では、次回をお楽しみに。A Bientot 🖐🏻!!

和泉 涼

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