【レビュー】洋書 Millésime54 par Antoine Laurain 「ヴィンテージ1954」(未邦訳)著/アントワーヌ・ローラン(『ミッテランの帽子』『赤いモレスキンの女』の作者)
オーディオブックと楽しむ世界の名作
Millésime 54 par Antoine Laurain
Blogmas Essai 23
あらすじ
2017年のパリ。エドガール・シャロリエ通りにそびえるアパルトマンは1860年代の建物。住人は最初は建設に関わった一族が主に住んでいたが、時代が変わりその一族で残っているのはユベールと家族だけだった。
地階にアトリエを持つマガリーは陶器の修復のプロ。その隣に住むジュリアンは、有名なハリーズバーでカクテル作りにハッスルする若いバーテンダー。アメリカ人観光客のボブはアメリカではハーレー・ダヴィッドソン社の技師を定年になったばかりで、初めてのパリに胸を躍らせていた。そしてユベールはマンションの生き地引として一目置かれていた。
ある日地下室に泥棒が入る事件が起こる。偶然い合わせた4人が泥棒を追い出した。騒ぎが収まり4人はいっしょに1954年のワインを飲んだ。翌朝目が覚めると、そこは1954年のパリだった・・・。
4人は集団ヒステリーの症状で同じ夢を見ているのか?それとも4人だけが「タイムスリップ」したのか?
鍵を握るのはワインがとれたボルドー地方のブドウ園。1954年はその上空で空飛ぶ円盤を見たという証言が後を断たなかったという。空飛ぶ円盤の出現にどんな秘密が隠されているのか?4人の運命は?・・・・
感想
「ミッテランの帽子」、「赤いモレスキンの女」のヒットで、世界20ヵ国以上で翻訳されるフランス作家のアントワーヌ・ローランが2017年に出した作品です。
「ミッテランの帽子」はフランスのミッテラン大統領の帽子を偶然手にした人たちの人生が不思議と好転する、という大人のおとぎ話ともいえる魅力的なストーリーでした。
今回は少しだけ映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思わせる大胆な演出で読者を魅了した作品。
1954年のワインを少し飲んだだけでその時代へワープしてしまった!ファンタジックなオープニングから、この作者ならではの心温まるラストシーンまでじっくり楽しめる作品です。
オーディオブックのよさ
人物の個性が伝わってくる会話
この作品では、SFめいたタイムスリップもさることながら、1950年代に活躍した写真家、映画監督、映画俳優、シャンソンの歌い姫が登場するシーンが次々と登場します。
- 写真家のR .ドワノーとフランソワ・トリュフォーがカフェで声をかけ合うシーン。
- オードリ・ヘプバーンとジバンシーがジュリアンの作ったカクテルを飲むシーン。
- レ・アル(Les Halles)と呼ばれたパリの市場でエディット・ピアフとジャン・ギャバンがジュリアンとマガリーの恋のキュービット役として活躍するシーン。
- 数々のシーンが次々と登場してストーリーに厚みと人間味を与える趣向にワクワクさせられます。
フランス語の美しい響き
Audibleの朗読では、朗読家一人がこれだけの役をこなしています。それが無理なく伝わってくるのは、見事なシナリオあってこそ。その魅力が朗読で余すところなく伝わってきます。
ことば使いは世代によって時代によって違います。1950年代と現代のことばづかいとリズムの違いも楽しめるのがこの作品のよさであり、ヒアリング・リーディングに適しているところです。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回をお楽しみに!
A bientôt!
和泉 涼
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