【レビュー】洋書「Ailleurs, si j’y suis」「ある肖像画」(未邦訳)『ミッテランの帽子』『赤いモレスキンの女』のアントワン・ローランのデビュー作

2021年4月20日

あらすじ

ピエール=フランソワ・ショーモン(43歳)はパリで特許専門の法律事務所を親友と開いていて事業は順調だった。趣味は骨董品のコレクションで時間を見つけてはオークションハウスに足を運んでいた。美しい妻、近しい友人たちに囲まれて幸せで満ち足りた人生を送っていた。

少なくともそう思っていた・・・自分とそっくりの肖像画を見つけるまでは。

18世紀に描かれた肖像画に描かれた自分と瓜二つの人物の正体は?ピエール・フランソワの調査がはじまる。手がかりは肖像画の紋章だけ。

フランス革命の頃に行方不明になったブルゴーニュ地方の伯爵とのつながりをつきとめたその時、彼の人生は思いもよらない方向へ向かい始める・・・。

魅力的なテーマ

本当の自分探し

あの時違う選択をしていたら全く違う人生になっていただろうか?誰でも同じ疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。

それは「心がちょっと元気をなくしているとき」だったり、「ちょっぴり人生に疲れているとき」のこと。ほんとんどの人は、そこで少し立ち止まったとしても、やがて自分の人生を歩み続けますが、主人公は違う「自分」を見つけてしまう・・・。

このテーマに書く作家はたくさんいますが、複雑なテーマだけに複雑な作品が多くて、なかなか満足のいく作品にめぐりあうことがないのでは?ハッピーエンドとも悲劇とつかない終わり方をする小説に不満!というあなたにオススメです。

運命の愛

運命の相手が決まっているとしたら?こうしている間にもあなたを待ち続けているとしたら?

シェークスピアの「ロミオとジュリエット」では、このテーマは叶わぬ愛のまま昇華しました。

本作ではパリとワインの都ブルゴーニュ地方の間で、見事に実る美しい愛として描かれています。

骨董品&オークションハウス

ロンドンのクリスティーズに対して、パリには「ドルオー」というオークションハウスがあります。ここでは値札に書かれた値段ではなく、買い手同士が決めた値で骨董品が取引されます。

作者の骨董品(特に古い鍵)好きはよく知られていますが、作品の中でもたびたびオークション関連の人物やできごとが登場します。

物語の中で、主人公が自分にそっくりな人物の肖像画を買おうとしたとき、なぜか同じ絵に自分と同じくらい執着するライバルが出現。競り値がどんどん釣り上がって「まさか逃すことになるのか?」と手に汗を握るシーンも。

作品のタッチ

2006年に初めて出版されたデビュー作で、自身のスタイルを模索しているのが見え隠れしますが、後にトレードマークとなるテーマが感じられる力作です。

評価

2007年にドルオー賞(Prix Drouot)を受賞(受賞すると本に赤い帯がつきます)

翻訳

ドイツ語版 2016年にドイツのホフマン・ウンド・カンペ社から「Das Bild aus mainem Traum」のタイトルで出版。Audible版もあります。

英語版 2019年に「The Portrait」(ある肖像画)のタイトルで出版。Audible版もあります。

作者アントワン・ローラン(Antoine Laurain)プロフィール

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作者アントワン・ローラン(Antoine Laurain)のほかの作品

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ご購入方法

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最後に

いかがでしたか?この作品は未邦訳なのは本当に残念です。英語版・ドイツ語版で楽しんでいただければと思いお薦めします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回をお楽しみに!A bientot!!

和泉 涼