【レビュー】「廃墟に咲く花」”Fleurs de Ruines” 作/ パトリック・モディアノ
こんにちは。和泉 涼です。
今回はパトリック・モディアノが1991年に出した作品をご紹介します。
ストーリー
1933年夜中に若い夫婦が自殺した。遺書には「妻が自殺した。今日は酒を飲みすぎた。私ももう生きていけない。理由は探さないでほしい」とだけ書かれていた。
主人公はガールフレンドのジャックリーンとこの自殺の状況を調べ始めるが、やがて自殺した夫婦の運命と自分の人生が重なっていく・・・。
作者
作者のプロフィールはこちらをお読みください。
テーマ
時間と場所と人
パリの街角と住んでいた年代と一緒にいた人。セットになって記憶に生まれているのを同じ場所を通ることで浮かび上がってくる。そんな経験はありませんか?
筆者は読者をパリの違う街角へ誘い出します。筆者について歩いているうちに、その場所にまつわる思い出話を聞かせてくれます。そうするうちに、いつの間にか時代が今ではなくその時代に変わっている・・・。
それがパトリック・モディアノのマジックです。
出版
スイユ出版から1993年に出版。
翻訳
日本語版が「最悪の春」として出版。
ご購入
Amazonからご購入いただけます。
まとめ
この作品では一つの事件の真相を追いかけているのではなく、若い夫婦の自殺の真相を追って二人が立ち寄った場所を訪ねて行くうちに、ほかの思い出が重なり、その思い出を追いかけるうちに、さらに別の時代を駆け抜け・・・気がつくと地下鉄で駅から駅へ移動するように時代を移動している・・・
ことばに誘われてパリの街なかを、幾重にも重なる時間の流れを縦横無尽に歩く、ちょっぴりシュールでスリリングな散歩です。同時に長年パリに住んだ作者だからこそできる、パリのなかの時間の散策でもあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回をお楽しみに! A bientôt!!
和泉 涼
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