【レビュー】洋書 Carrefours des Nostalgies par Antoine Laurain「ノスタルジーの交差点」(未邦訳)『ミッテランの帽子』『赤いモレスキンの女』の作者アントワーヌ・ローラン作品
lire l’article en francais / この記事をフランス語で読む
あらすじ
フランソワ・ウルトゥヴァンは町長選挙に敗れてしまった。なぜ対立候補と200点もの差がついたのか誰も分からない。落選したことだけは間違いない。当選したら公務に忙殺されることを覚悟していたのが一転して予定がなくなった。電話もならなくなった。世間から忘れられたみたいに・・。
庁舎から引き上げた大量の荷物の中から高校を卒業した頃の写真が目についた。未来に目を輝かせたティーンエイジャーの中の背の高い痩せた若者。今の自分と別人に思えた。懐かしさが込み上げてみんなに会いたいと思った。
シークレットサービスの友人に頼んでかつてのクラスメートの住所を手に入れた。こうしてフランソワの心の旅が始まる。
やがてそれはジュネーヴの銀行の隠し口座の謎や暴かれるはずのなかった秘密、そして誰にも見つからないはずの選挙の自動集計のからくりを暴くことになるとは知る由もなかった・・・。
テーマ
思い通りに生きるだけが人生か
フランソワ・トリュフォーに憧れて映画の世界に入ったクレマンはアダルト映画の制作者に、みんなが憧れたマドンナのマルジョリーは高級コールガールに、シャイで物静かな少年だったジェロームは神父になっていた・・・。
かつてのクラスメートの人生を見た時、フランソワの心に勇気が戻り人生を取り戻す活力がみなぎってくる。いつも順風満帆とは限らない。そういう時こそ支えになるのが友情と人生の伴侶の愛情なんだ。
人生を取り戻す勇気が湧いて逆境に立ち向かっていくラストが大きな感動を運んできます。
お互いを支える夫婦の愛
主人公の妻は親から継いだレストランを営むオーナーシェフのソフィーは落ち込む夫を支える励まし、主人公の心のよりどころとなる存在。
若い頃に親からレストランを継いだ頃、女性シェフが少ない時代で逆風が吹き荒れた。そんな時に支えてくれたのが夫だった。今でも彼を一番の理解者として信頼し新しいレシピを作るときも毎回相談している。長年支え合った夫婦の愛が美しく描かれています。
作品のタッチ
Izumiがこの小説を読んだのは『ミッテランの帽子』と『赤いモレスキンの女』を読んでから。2つの作品の作風に魅了されて作者のルーツが知りたいと思いました。3作目の本作ではじめて主人公を通して5人の人物を語るという手法が用いられています。のちの作品のルーツを強く感じます。
英訳も邦訳もないのはとても残念ですが縁があったらお手に取ってみていただきたいと思ってご紹介しました。
アントワン・ローランのプロフィール
アントワン・ローランのほかの作品
ご購入方法
Amazon.co.jpでご購入いただけます。
まとめ
Izumiがこの小説を読んだのは『ミッテランの帽子』と『赤いモレスキンの女』を読んで後のこと。2つの作品が大好きだったので、作者のルーツが知りたくなったからでした。
3作目となる本作ではじめて主人公を通して5人の人物を語るという手法が用いられていて、のちの作品のルーツを感じました。
いかがでしたか?最後までお読みいただきありがとうございました。
次回をお楽しみに! A bientȏt!
和泉 涼
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません