ベルギー・コミック「タンタンの冒険」ユニコーン号から映画へ 

2021年4月20日

Les Trésors de la BD Belge

こんにちは。和泉涼です。今回は私が生まれ育ったベルギーのコミックをご紹介します。「タンタンの冒険 謎のユニコーン号」です。

ストーリー

タンタンが骨董市で美しい三帆船(さんはんせん)の模型を買おうとしいた。すると横から割り込んできた男が「代金の3倍払うから譲って欲しい」と申し出る。タンタンは譲らない。その後もタンタンから模型を買いたいと申し出る謎の人物が次々に現れる。

偶然やって来たハドック船長も買ったばかりの模型を見ると顔色を変える。驚きのあまりことばを失った船長はタンタンを自宅に連れて行くと壁にかかっている肖像画を見せた。

肖像画にはハドック船長の先祖の騎士フランソワ・ド・ハドック船長と愛船ユニコーン号が描かれていた。しかもユニコーン号はタンタンが買った三帆船の模型にそっくりだった。ハドック船長はハドック家で語り継がれてきたフランソワ騎士の冒険を語りはじめる・・・。

テーマ

骨董市

ブリュッセルといえば骨董商、骨董市。日曜日には週ごとに普通の食料品の市場、鶏からカナリアまでのあらゆる鳥が集められる鳥の市場、花の市場が交代で立ちますが、忘れてはならないのが骨董市。

ちょっとしたお小遣いで変えるものから、隠れたお宝などがずらっと並びます。目的はいかに賢い買い物ができるか。いかにして値打ち物を見抜けるか。品物の価値を見極めるのを楽しむものです。

作品の中でこんな骨董市でタンタンはみごと目もくらむような宝物へ導く模型を買う、というオープニングにワクワクします。

モチーフ

ルイ14世時代の桁違いな宝もの

ルイ14世といえば、ベルサイユ宮殿を創った王。アメリカのルイジアナもこの時代にできたフランス領。国王類14世が太陽王として君臨した時代です。この時代の宝物、どの時代の宝物にも勝る宝物が作中に登場します。

タンタンが買った模型はこの宝物へ導く手がかりだった、という粋な仕掛けが22作あるタンタンの冒険の中でも、魅力的な作品に仕上げています。 

作品

1947年に出版されて以来世界中で愛読されているベルギーのコミック。

主人公は少年記者のタンタン(Tintin)と愛犬のスノウイ(Milou)。

友人のハドック船長(Le capitaine Haddock)、双子の刑事デュポンとデュポン(Dupont et Dupond)、発明家のヒマワリ博士たちといっしょに難事件を解決する冒険もの。 

作者 エルジェ(Hergé)

本名ジョルジュ・レミ。1907年にブリュッセルのエッテルベーク区に生まれる。第1次世界大戦が勃発した頃から絵を描き始めたエルジェは当時戦後にドイツ兵をやっつける兵隊の絵を描いて周囲を驚かせた。

幼い頃からボーイスカウトに入っていて、最初はボーイスカウトの機関紙の挿絵を描いた。その後イニシャルのRとG(フランス語で読むと「エールジェ」)とってエルジェ(Hergé) のペンネームを使い始める。

学業を終えると新聞社「20世紀」に就職。子ども向けの新聞「20世紀ジュニア」に1929年に『タンタンの冒険 タンタンのコンゴ冒険』をモノクロで発表。カラーになったのは後になってから。アメコミ(アメリカのコミック)のように吹き出しで台詞を書くスタイルをとっており、後に「ヨーロッパのコミックの父」とよばれた。

1930年台にタンタンのソビエト連邦での冒険のコミックを出した後にアメリカを題材にした『タンタンアメリカへ(Tintin en Amérique』を発表する。

その後中国人の留学生のチャンと知り合ったことでスタイルが変わり、作品の下準備の取材を綿密に行って『中国の蓮(Le Lotus Bleu)』を発表。この作品では日満洲鉄道爆破事件などの史実が始めた登場した。

その後エルジェはベルギー最大の新聞社ル・ソワール(LE SOIR)紙に移籍するが当時はドイツ軍の占領下にありナチスがル・ソワール紙を掌握していた。そのため戦後に親独疑惑(戦争中にナチスに協力したのではという疑い)が浮上したが元レジスタンスのメンバーだった編集長のおかげで疑惑は晴らされた。

1946年には同じ編集長が機関紙「タンタンの冒険」を創刊しタンタンの冒険は大きな成功を収めました。「タンタンの冒険」は全22巻発表されました。

翻訳

ヨーロッパはもちろん、日本、中国、アメリカなど、100カ国以上で翻訳されて親しまれています。ほんの一部ですが、中国、ロシア、チベットなどで出版されたコミックの表紙を集めてみました ↓ 

映画化

The Adventures of Tintin

キャスト

ジェイミー・ベル=タンタン役

アンディ・サーキス = ハドック船長役

ダニエル・クレイグ = サカリン/レッド・ラカム役

サイモン・ペグ = デュポン役

ほか

スタッフ

監 督:スティーヴン・スピルバーグ

    ペーター・ジャクソン

脚 本:スティーヴェン・モファット

    エドガー・ライト

    ジョー・コーニッシュ

原 作:エルジェ

音 楽:ジョン・ウィリアムス

製 作:Amblin Entertainment

映画データ

原 題:The Adventures of Tintin

公 開:2011年

制作国:アメリカ

配 給:クレストインターナショナル=ヘキサゴン・ピクチャーズ

上映時間:107分

まとめ

フランス語のコミックに有名なキャラクターはいくつもありますが、一番有名なTintinはベルギーのキャラクター。エルジェが生んだキャラクターたちは世界 中で愛され、遠く離れた日本でもとてもポピュラーです。

Tintinが作られたのは今から100年前。少年記者という言葉も今はありません。当時はネットも携帯もSNSもない時代。もうとっくになくなった時代ですが、正義、友情、善悪など私たちに訴えかけている価値観は今も健在。

インターネットの普及やグローバリゼーションで得たものは大きいですが、同時に失ったものや見失っているものもまた大きいといわれます。価値観が目まぐるしく変わる今こそ、家族で一緒に読んだりする機会を持ってはいかがでしょう。

時には「昔は当たり前だった」価値観を思い出してみるのもいいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回をお楽しみに! A bientot!

和泉 涼

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