【レビュー】2つの「マラヴィータ」映画と小説 原作者/トニーノ・ブナキスタ 

2021年4月20日

あらすじ

マフィアの世界で生きてきたジョヴァンニ・マンゾーニはボスへの忠誠心より方に誠実である道を選んだ。ボスに不利な証言をした彼は、FBIの承認保護プログラムの下に置かれフランスに隠される。もちろんFBIが監視もつけて保護してくれる。なのに・・・

バーベキューのやり方に文句をつけた近所の住人、水道工事を頼もうとしたら料金をふっかけてきた配管工・・・気に食わない奴は許しておけない性分がつい出てしまい・・・。

こんなアクシデントを起こして南仏からノルマンディに移ってきたのはいいが今度こそ目立たないように生きることができるのか・・・。 

テーマ 

正義と償い

「目には目を」と組織=ボスへの忠誠が全て、という世界で生きてきた主人公が正義のためボスに不利な証言をしたためにFBI承認保護プログラムに入った。

これまでの罪への償いの意味があるのか善行を行なったのはいいが、おかげで家族もろとも住み慣れたアメリカを離れてフランスの田舎に潜伏することになった。

組織の人にとての正義が「一般人」の正義とどれくらい違うか考えてしまいますね。

マフィアと一般人のカルチャーショック?

価値観の違う文化が出会った時に起きる摩擦カルチャーショックというもの。マフィアと一般市民のカルチャーショックが起きたら?このひねりの入れ方が作者トニーノ・ブナキスタが素晴らしいストーリーテラーなる所以かも知れませんね。

翻訳

日本語版

『隣のマフィア』でカドカワ・ブックスから出版されました。

映画化「マラヴィータ 〜ザ・ファミリー」

制作:リュック・ベッソン

プロデュース:M.スコーセッシ

監督:リュック・ベッソン

脚本:リュック・ベッソン、ミカエル・カレオ

音楽:エフゲニー・ガルペリン、サーシャ・ガルペリン

配役:ロバート・デニーロ(Robert De Niro)=フレデリック・ブレイクことジオヴァンニ・マンゾーニ役

   ミシェル・ファイファー(Michelle Pfeiffer)=マギー・ブレイクことマギー・マンゾーニ役

   トミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones)=一家を守るFBI捜査官

   ダイアナ・アグロン(Diana Agron)=長女ベル・ブレイク役

   ジョン・ドレオ(John D’Leo)=長男ウォーレン・ブレイク役

配給:ブロードメディア・スタジオ

作者トニーノ・ブナキスタのプロフィール

1961年生まれのフランスの小説家・脚本家。1985年にロマン・ノワール作品で作家デビュー。ロマン・ノワール作品を5つ発表した。1997年に小説『サーガ(SAGA)』を発表。テレビ局の時間枠を埋めるためのドラマの作成を依頼された4人の脚本家を主役にしたもので、この作品で売れっ子作家の殿堂入りを果たした。

並行して映画界に進出し、映画のための脚本を多く手がける。日本で知られるのは2001年の映画『リード・マイ・リップス』(主演はヴァンサン・カッセル)。

「マラヴィータ」は2004年に発表した作品で初期のロマン・ノワールにヒューモアをまぶした作品でリュック・ベッソンの製作で映画化された。2008年に続編を発表した。

2020年に『SAGA』を出した23年後に平行線を行く新作 ”Toutes les Histoires d’ Amour ont été racontées, sauf une”(『愛は語り尽くされた』を発表したばかり。

作者のほかの作品

ロマン・ノワール

  • Épinglé comme une pin-up dans un placard de G.I., Fleuve Noir, 1985
  • La Madonne des Sleepings 1989年、ガリマール社 
  • Trois carrés rouges sur fond noir, 199年、ガリマール社
  • La Commedia des ratés 、1991年、ガリマール社
  • Les Morsures de l’aube 1992年、リバージュ社

小説

  • Saga 1997年、ガリマール社
  • Quelqu’un d’autre、2001年、ガリマール社
  • マラヴィータ 、2004年、ガリマール社
  • マラヴィータ〜アンコール、2008年、ガリマール社
  • Homo erectus、2011年、ガリマール社
  • Romanesque、2016年、ガリマール社
  • Toutes les histoires d’amour ont été racontées, sauf une、2020年、ガリマール社

ほかに脚本、マンガの脚本など多数

まとめ

カタギの生き方がこんなに難しいなんて・・・

主人公の嘆きが聞こえてきそうなストーリー。普通の刑事ドラマのようでいて、ヒューマンドラマのレンズを通して描いているところが、この作者の持ち味。マフィア映画の独特の血生臭さをニオわせながら、刑事ドラマと家族ドラマを上手に調理した小説です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

関連記事: 【レビュー】洋書 SAGA par Tonino Benacquista「サーガ」著/トニノーノ・ブナキスタ(未邦訳)

次回をお楽しみに!!

A bientot!

和泉 涼