プレイヤデスの7姉妹 第3話 「愛の歌姫スター」著ルシンダ・ライリー
こんにちは。和泉 涼と申します。今回はアメリカのベストセラー作家ルシンダ・ライリーの作品、フランスでも大ヒット中のシリーズ「プレイヤデスの7姉妹」の第3話『影の歌姫』についてお話しします。
あらすじ
億万長者のパー・ソルトはレマン湖のほとりの古城に住んでいました。そして世界中を歩き回って探した出した6人の女の赤ん坊を養女に迎えプレイヤデス星団にちなんで命名し「アトランティス」で大切に育てました。
プレイヤデス星団といえば日本では昴の名前でも知られ7つの明るい星からなる星団。パー・ソルトは娘を7人養女に迎える計画でした。6番目のエレクトラが来た後にパー・ソルトは7人目の赤ん坊の行方を追いましたがなぜかアトランティスに連れ帰ることがありませんでした。
2007年6月、パー・ソルトは突然亡くなります。彼がどうやって生計を立てていたのか。彼は莫大な財産をどうやって手に入れたのか。彼はなぜ世界中に散らばっていた6人の赤ん坊を養女に迎えたのか。7人目の妹はどこにいるのか。パー・ソルト本人がどこの国の出身で本当の名前はなんというのかすら謎のままとなってしまいます。
養父の死の知らせに、世界に散らばっていた6人の娘たちはアトランティスに集まります。パー・ソルトは娘たちに一通ずつ手紙を遺していました。手紙の中には出生の秘密を解くことができる手がかりが。
第1話では長女のマーヤが、第2話では次女のアリーがパー・ソルトの手がかりをもとに旅立ち、本当の家族を見つけて新たな人生を歩み始めました。詳しくはそれぞれの記事をお読みください。
3作目となる本作では3番目の娘のスターことアステローペのお話です。
スターは長身で肌色も明るいブロンドの美しい女性に成長しました。幼い頃から内気で他人と打ち解けるのが苦手な性格。一方6ヶ月違いの妹、シーシーことセラネオは思ったことをすぐに口にするボーイッシュな性格で、気性が正反対で年齢が近いとこもあってか双子の姉妹のような親近感がありました。
10年ほど前、スターはイギリス文学が好きで作家を目指してケンブリッジ大学への進学を目指しましたが、シーシーとの別離がネックになって進学をあきらめたいきさつがあります。そして現在はこれといった職業を持たずに妹のシーシーと一緒に世界中を旅行している時に養父の訃報が入りスイスへ戻って姉妹たちと再会したのです。
一番上の姉マーヤは翻訳家、2番目の姉のアリーは有能なヨットのレーサーであり素晴らしいフルート奏者、すぐ下の妹のシーシーは画家の卵、その下の妹のタイジェットには予知能力が、そして末の妹のエレクトはスーパーモデルとして世界中で活躍中。
姉や妹たちに比べるとスターはごちそうをこしらえたり、家の住み心地をよくしたり、ガーデニングが得意な点を除くとこれといった才能に恵まれていないように思え、姉や妹たちの充実した生き方が羨ましく感じられるようになります。同時にシーシーとの特殊な姉妹関係への苛立ちも感じられるようになっていました。
女性が社会進出が認められる現代に生きながら、これといった野心も持たずに生きていくのはおかしいのではないだろうか。こんな自分に養父のパー・ソルトも恥じていたのではないか。そんな疑問が心をよぎるようになります。
亡き養父パー・ソルトの最後の手紙には、スターの出生の秘密を解明するための手がかりとして、ロンドンのケンジントン通りの古本屋さんの住所と不思議な黒豹を象った置物が入っていました。
運命に導かれてケンジントンの古本屋を尋ねるとオーナーはケント州の旧家ヴォーン家の家柄であることが分かります。1919年頃の当主の妻はあのベアトリックス・ポッターと交友があったとも分かります。
ヴォーン家は今は財産の大部分を失い、現当主は長男の出産後に妻を亡くし失意の日々。変わり者の次男は古本屋を経営しているとはいうものの採算が取れずに破産の寸前。二人の従兄弟のマーガレットは画家で7歳になるローリと本宅に住んでいますが屋敷が古くなり大きすぎるために管理が手に余り、こちらも経済的にもがいている状態。
人付き合いが苦手なスターは彼らと出会うなりすぐに心が通い合うようになります。そして心を込めてこしらえたごちそうを一緒に食べ、スターの持ち前の穏やかな暖かさに触れて少しずつ活力を取り戻していきます。
本作では1909年から1944年の激動の時代に引き裂かれた恋人たちの物語と、自分のルーツを探す旅の途中で人生の意義を見出すスターの姿が美しく絡み合う、愛と勇気の物語。
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感想
前作と同じようにスターのルーツにつながる家族のドラマチックな物語があります。今回はベアトリス・ポッターと親交のあったフローラがスターの大叔母という設定からこの大叔母の波瀾万丈な半生が語られそこに自分のルーツを探すスターの物語が美しく絡められています。
スターの物語の中に20世紀の初頭のイギリスを舞台にした大叔母の物語が内包されていて一つの小説で2つのストーリーを楽しむスリルがありました。
日本語に翻訳されていないのが残念ですが、いつか登場することを強くお祈りして締めくくりたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
和泉 涼
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