マロセーヌシリーズを楽しむコツ 

2021年6月12日

こんにちは。和泉 涼です。私がこのシリーズを知ったのはつい最近のこと。1巻目を読んでみてハマってしまいました。全巻攻略を目指して読み進めている最中です。

ダニエル・ぺナックの作品の中で、推理ものの「マロセーヌシリーズ」はユニークな表現が豊富に使われとにかく面白いことで知られる、異色の推理小説シリーズです。

6つの作品から成り立っていて、時間の流れや登場人物が変化していきます。筆者も2巻の1/3あたりでテレーズが老人の手を取って運勢を見るシーンがありますが、「テレーズって?」となってしまいました。そのため、ポイントを整理しておこうと思いました。みなさんもお役立ていただければと思います。

物語の筋

とにかく子沢山のマロセーヌ一家とベルビルの住人たちの心温まるお話。そこに絡んでくる事件。大都会パリのどこかで爆弾事件や連続殺人がおきます。二つの線がなぜかつながってしまうと、もう本を離すことができなくなります。結末が気になって、気になって仕方なくなりなります。やがて結末がやってくる。

主な登場人物

ママ 

一家のお母さん。みんな「ママ」とよんでいて、名前は分からない。恋人と「家出」しては身重になって帰ってくるのが定番。

長男 バンジャマン・マロセーヌ 

一家の大黒柱。職業=デパートの苦情処理係。天職=身代わり

長女 ルーナ・マロセーヌ 

職業=看護師。病院勤務。転職=愛すること

次女 クララ・マロセーヌ 

職業=学生。天職=カメラマンでその瞬間の真実を写真に収めるのが得意技。バンジャマンのお気に入りの妹。

三女 テレーズ・マロセーヌ 

職業は学生。天職=運勢占い。

次男 ジェレミー・マロセーヌ 

職業は学生。天職=発明。

三男 チビ

ピンクの眼鏡の男の子の赤ちゃん。

四女 ヴェルダン

一番最後に生まれる女の子の赤ちゃん。

ジュリー

マロセーヌと恋に落ちる美貌のレポーター。第1巻でマロセーヌが何故か「ジュリアおばさん」と呼んでいたがもちろん血はつながっていない。

ローラン

長女ルーナのボーイフレンドで双子が生まれた後に結婚する。知り合った頃はまだ学生だったがルーナと離れたくなくて1年間休学したというユニークな経歴の持ち主。

愛犬 ジュリウス

体臭がキツくて、テンカンの持病を持つ愛犬。テンカンの発作は一家の誰かに不幸が降りかかる予兆のようなもの。

作品

第1巻 人喰い鬼たちのお愉しみ

原題:Au bonheur des Ogres (1985年、Gallimard出版)

翻訳:中条省平(白水社、1995年)

お話:バンジャマン・マロセーヌは異父兄弟の面倒をみる一家の大黒柱。実はコテンパンに怒られた後、怒鳴った相手すらホロリとするほどの嘘泣きの天才。この得意ワザを利用してデパートの苦情処理係をしている。クリスマスも間近のある日、おもちゃ売り場で爆弾事件が発生する・・・。[もっと読む…]

第2巻 カラビン銃の妖精

原題:La Fée Carabine(1987年、Gallimard出版)

翻訳:平岡 敦 (白水社、1998年)

お話:ベルヴィルで若い刑事が古い拳銃で頭を撃ち抜かれて死んだ。警官殺しとあって警察はすぐに捜査に乗り出す。やがて6人の異父兄弟を養うバンジャマン・マロセーヌが容疑者として浮かび上がり・・・。

第3巻 散文売りの少女

原題:La petite marchande de prose (1989,Gallimard 出版) 

翻訳:平岡 敦 (白水社、2002年)

第4巻 ムッシュ・マロセーヌ

原題:Monsieur Malaussène(1995, Gallimard出版)

翻訳:平岡 敦 (白水社、2008年)

第5巻 クリスチャンとイスラム教徒たち(未邦訳) 

原題:Des chrétiens et des Maures (1996年、Gallimard出版)

お話:「パパはどこ?」ある朝ピンクの眼鏡のチビが朝食のシリアルのボウルを押しのけて言った。どうやらパパが来るまで食べないつもりらしい。一家の大黒柱のバンジャマンは途方に暮れた。なにしろマロセーヌ一家のパパたちは誰一人消息がわからないのだ・・・。[もっと読む…]

第6巻 情熱の結晶たち(未邦訳)

原題:Aux fruits de la passion (1997年、Gallimard出版)

結論

マロセーヌ・シリーズは面白い推理小説。いつも心ならずも凶悪犯罪の犯人と間違われてしまう不運な長男バンジャマンが警察に追いかけられながらも真相を解明するのが面白い痛快シリーズ。

メグレ警部シリーズのようなハードボイルド作品やエルキュール・ポワロやミス・マープルのような頭脳戦とも違う作品です。

邦訳されたのが6巻中4巻だけというのが残念ですが、作品の良さを知っていただきたいと思ってご紹介しました。

機会があればぜひお手に取ってみてくださいね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回をお楽しみに! A bientôt!!

和泉 涼

※巻番号は便宜上入れたもので小説の作者の意図ではありません。